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船舶管理会社を取り巻く制度

さて、今回は、日本の船舶管理会社を取り巻く法制度をできるだけわかりやすく説明を試みようと思います。

契約図は、いろいろな形がありますが、下記のケースが一つの代表的な図だと思います。船舶所有者が船舶を所有しており、その船舶の管理を船舶管理会社に委託している。船舶所有者は、その船舶を船舶運航者に定期傭船に出しているという契約形態です。船舶所有者が、船舶運航者を兼ねているケースもあると思います。

【契約例】

上記の図を前提として、

  • いわゆるISM Code(International Safety Management)上の責任を引き受ける「会社」はどの会社か?
  • 運輸安全一括法 ―(海上運送法または内航海運業法)の規定による事業者はどこの会社か?
  • 内航未来創造プランの船舶管理会社とは?
  • 日本の法制度の中ではどのような整理がつくのか?

について、説明していきたいと思います。

1.ISM Code上の会社

そもそもISMとは、「HERALD OF FREE ENTERPRISE」(転覆188名死亡)「EXXON 」(座礁・油流出 2万トン余)などの大きな海難事故を契機として制定されました。ハードが進化しても、おおむね海難事故の原因の80%のヒューマンエラーを減らしていかないと海難防止にはならないとの観点より、陸上の管理部門も含めた「安全管理システム」(ソフト要件)を整えていくことを主旨としています。

2002年7月1日より、国際航海に従事する旅客船、500トン以上の貨物船及び移動式海底資源掘削ユニットとその運航管理を行う会社には、その適用が強制要件になっています。

強制要件となっていない国際航海に従事しない船舶においても、傭船の条件としてISMコードの取得が含まれているケースが増えており、任意IMSとして運用されています。

ISMコード上、

「会社」とは、船舶所有者、又は船舶管理会社若しくは裸傭船者その他の責任を引き受け、かつ、その引き受けに際して、この国際安全管理コードによって課せられるすべての義務と責任を引き継ぐことに同意した者をいう。

と規定されており、上記の契約例の図では通常、船舶管理会社がISMコード上の「会社」となり、船舶管理契約書中で責任を引き受ける旨規定されています。その必要とされる機能は、船舶運航管理、保守管理、船員管理の3つとなります。

2.運輸安全一括法 ―(海上運送法または内航海運業法)の規定による事業者について

2006年10月から「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律」により、鉄道、道路、貨物、海上、事業者は、安全管理体制を構築し、その内容を記載した安全管理規定を作成することが義務付けられています。

この法律が定められた背景には、2005年4月のJR西日本の福知山線における脱線事故、航空分野における各種トラブル等、ヒューマンエラーが関係するとみられる事故が契機になっています。

従って、その背景にあるヒューマンエラーを無くしていかないといけないという発想は、ISMと同様です。

安全管理規定の作成・届出等が義務付けられている事業者は、

海上運送法では許可を受け、又は届出を行った事業者すべて。
内航海運業法では、登録を受けた内航海運業者すべて
(船舶の貸渡しをする事業のみ行うものを除く。)

と規定されています。先ほどの図でいうと、船舶運航者であるケースが多いと思います。

 

3.内航未来創造プランの船舶管理会社とは?

国土交通省が2018年4月から内航未来創造プランの中の1つの施策である登録船舶管理事業者制度を始めました。

この制度の背景には、荷主が寡占化している一方で、オーナー・オペレーターについては企業数が多く、その多く経営基盤がぜい弱な状態にあります。したがって、現在船員不足が問題となっていますが、船員を育成していく環境にはないことが多い状態です。そこで、船舶管理会社に集約して、業務の効率化を図り、船員についても育成する体制を整えたいとの意図があると考えています。

船舶管理会社については、管理レベルへの不安等の懸念からその活用が進んでいない状態を問題と捉え、登録船舶管理事業者制度は、業務の情報や品質を「見える化」することによって、船舶管理会社の活用を促進することが狙いとなっています。

したがって、1,2との背景は全く異なり、登録するかしないかは任意の制度となります。記事を書いている2018年9月現在、全国で11社が登録されています。

4.日本の法制度の中ではどのような整理がつくのか?

例えば、外航と内航でともに稼働する船舶の場合には、500トン以上の船舶であれば、ISM及び運輸安全一括法にそれぞれ対応しなくてはならないことになります。

双方は、大枠ではその背景が同じために求められてることが共通することが多いですが、細かいところで、微妙に違いがあります。運用上それを調整していく必要があります。

船舶管理会社として活動をするにあたり、未来創造プランの登録船舶管理事業者制度に登録することは任意となっているため、登録しなければ、船舶管理事業ができないということではありません。

 

現在私ども共栄マリンは、船舶管理会社として、ISM code上の「会社」としての責任を引き受けています。管理船舶において、運輸安全一括法で求められる事項との実務の調整をさせていただく機会を頂戴したことがあります。未来創造プラン上の船舶管理会社としての登録については、お客様にとってメリットがあるのか、現在様子を見ている状態です。

船舶管理会社として2018年9月現在で8年ほど業務を営んでまいりました。その中で、乗船している船員の能力が大切であることを感じています。最も大切な安全を確保するためには、この船員不足の状況において、船員を育てていく以外にないと考えるに至っています。

私たちの使命「海洋の重大人身事故なき世界を創る。」達成に向けて、何が最も大切かを都度考えながら船舶管理に取り組んでいきたいと思います。